●汚職は効率的か?
シカゴ大学のMarianne Bertrandの報告を聞いた。
"Obtaining a Driving License in India: An Experimental Approach to Studying Corruption"
インドの自動車免許取得プロセスでの汚職に関する実験的実証研究で、
汚職は非効率なルールに対する抜け道として資源配分の効率性向上に役立っているか
という仮説を実証していた。
以前紹介したBen Olkenの研究などでは汚職の有無や,汚職を減らす方法
に焦点がおかれていて,汚職がそもそも悪いものかどうかは問われていなかった。
自動車免許を取ろうとしている人の中からランダムに声をかけた800人くらいを
特に何もしない(調査協力への謝礼のみ)グループ(A)
早く免許を取れたらボーナスをあげるグループ(B)
運転教習をただで提供するグループ(C)
3つに分けて、実際に免許を取るまでの期間、免許を取るまでの事務的プロセス(役人とどのようなやり取りがあったとか)、免許を取った直後の自動車運転に関する知識と技術を比べていた。
平均的な結果は、
Aグループ:最初は自分で役人と交渉するも歯が立たず途中から代理人を雇う。運転の腕前は下手。
Bグループ:最初から代理人を雇ってとっとと免許をゲット。運転の腕前は下手。
Cグループ:なまじ運転ができるようになるせいか、最後まで役人と自分で交渉して免許取得までに一番時間がかかる。運転の腕前はA,Bよりもはるかに上手。
役人に直接賄賂を渡したケースはほとんどなく(調査協力者が賄賂について語りたくないからということはないということはチェックしているらしい)、代理人が実質的賄賂の仲介者になっているらしい。結果としては、免許取得にお金をたくさん払う気がある人は早く取得できるという意味では汚職は資源配分の効率性に寄与している、そしてそれは、運転がうまくて早く免許を取るに値する人が早く免許を取るようにはなっていないことから、大事なのはあくまでお金を多く払う気があるかどうだ、ということになる。
とりあえず、AとBに関しては、免許を取っているのに60%前後の人が自動車運転に関する基本的な質問(ブレーキとアクセルの区別など)5問のうち最低1 問を間違えているとか、免許を取る前のアンケートで25%の人がすでに車の運転をしたことがあると答えているとか、代理人を雇うとほぼ確実に実地試験がなくなるとか(汚職は非効率なルール(官僚との複雑なやり取り)だけでなく必要なルールまでも曲げているということ)、いろいろショッキングなデータがあった。
代理人の存在が免許取得の手続きで決定的な役割を果たすのにも関わらず,
報告では代理人のことは実証結果の説明のところまで触れられなかったので
わかりにくかったのが残念。