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2005年12月07日

●輸出財の品質を測定する方法

YaleのPeter Schottの報告を聞いた。

Estimating Cross-Country Differences in Product Quality
(With J.C Hallack)

各国の輸出品の品質を測定する新しい方法を提唱している。輸出品の品質の変化は経済発展と重要な関係を持っているし,最近では途上国の所得格差の拡大のメカニズムにも重要な役割を果たしていることが指摘されている(Verhoogen (mimeo)の紹介も参照)。また日米自動車摩擦の際には,VER(輸出自主規制)とともに日本の自動車メーカーが米国向けの輸出品をグレードアップさせたと言われているので,輸出品の品質を考慮することは垂直的差別化が可能な市場に関する通商政策の分析にも重要である。

ところが実証研究では品質の測定方法が十分に満足のいくものではないと指摘されている。今までの研究では品質変化が重要な位置を占める論文でも品質以外の変数に関する含意をテストしていて品質そのものには踏み込まなかったりしているか,財の輸出価格が高いほど品質が高いとみなしていることが多かった。しかし、品質以外にも為替レートや生産コストなど輸出価格に影響する要因はあるので輸出価格=品質とみなしてしまうことには問題がある。

この論文では各国各財の貿易量と価格,セクターごとの貿易黒字と各国の為替レートのデータからセクターレベルの品質を推定する方法を提唱している。そして実際に米国の主要な貿易相手国45国に関して1980年から97年の製造業の品質の推移を推定している。その結果,中国などでは旧来の輸出価格=品質とみなしてしまう方法では品質向上を過小に評価してしまうことがわかった。

(この論文の手法はややこしいので興味のない方は以下の文は飛ばしてください。興味のある方も以下の文を飛ばして原論文にあたることをおすすめします)

(1)任意の国のペアごとに品質と品質調整済み価格(Pure Price Index)を分離していない価格指数(Inpure Price Index) (セクター単位)を算出する。このInpure Price Indexは両国でセクター内の財の価格を集計したものの比で,理論上の概念で直接は観察不可能なものなので推定する必要がある。Inpure Price Index=Pure Price Index*品質という関係が成立している。

A国でA国での価格のもとである財バンドルを消費していたのが,価格水準がB国のものに変化したと考える。このときもともと消費していたものとまったく同じものを買うときにかかる支出額に比べ,当初得ていた効用水準を達成するために必要な支出額のほうが少なくてすむはずである。このことから最低必要支出額の比とA国とB国の(パーシェ(のようなもの)価格指数とラスパイレス(のようなもの)価格指数の2つ分不等号が成立する)。セクター内の財の数が2国間で異なってもいいようになっているので話がややこしくなるが一定の条件の下でInpure Price Indexがこの2つの価格指数の範囲内に収まることが証明できる。パーシェ,ラスパイレス価格指数はデータから計算できる。そして,Inpure Price Indexを実際にハーシェ,ラスパイラス価格指数内に収まっている割合を最大化するように推定する。

(2)国,セクター別貿易黒字率を(1)(1)で推定したInpure Price Indexと固定効果,トレンド項に回帰して,そこで得られた各係数の推定値からPure Price Indexと品質を計算する。

ある国,あるセクターの貿易黒字率は標準的な消費者効用最大化の帰結として品質調整済みの価格指数(Pure Price Index)と貿易コストの関数としてあらわしうる。( 産業組織論の実証ではシェアと品質をリンクさせることがあるが,考え方としては似ている。)  また。ある国,セクターの品質を固定効果と国,セクター固有の線形トレンドと撹乱項の3つからなっていると仮定する。そうすると,貿易黒字率を(1)で推定したInpure Price Indexと固定効果,トレンド項に回帰することで得られた各係数の推定値からPure Price Indexと品質を計算することができるようになる。Inpure Price Indexは品質への撹乱項と相関を持っていると考えられるので,為替レートを操作変数として使うことを提案している。

疑問点(おもに手順(2)に関して)
この論文では固定効果の推定量は一致性を持たないはずなのに,それを品質の計算に使うことはどこまで正当化されるのだろうか。

また,固定効果とトレンド効果の推定量(の和をInpure Price Indexの係数の推定値で割った)がそのまま品質の推定値となると,セクター別貿易黒字率の品質以外のセクター固有要因と品質向上以外のセクターの線形トレンド要因もすべて品質と計算されてしまうような気がする。マクロで貯蓄超過の国の品質を過大評価することにならないだろうか。

さらに,Verhoogen(2004)紹介はこちらではメキシコでは通貨価値下落によって貿易機会が広がり品質向上がもたらされたことを主張している。もし為替レート変動そのものが品質向上へのショックとなるならSchottの推定方法のうち為替レートをInpure Price Indexの操作変数として用いる部分は正当化されなくなると思う。

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