●貿易自由化と児童労働
国際経済学セミナーでNina Pavcnick (Dartmouth)の報告を聞く。彼女は貿易と産業調整、貿易と労働のトピックに関してミクロデータを駆使して精力的に論文を書いている。今日の論文は、インドの90年代の貿易自由化が児童労働に与えた影響の実証分析。
Trade Liberalization, Schooling, and Child Labor: Evidence from India
(joint with Eric Edmond and Petia Topalova)
関税がより大きく下落した財をより多く生産している地域は、関税下落によって以前より厳しい国際競争にさらされたと考えられる。この研究はそうした地域はほかの地域に比べ、通学率の増加が小さく、児童労働の減少幅が小さいということを実証していた。
注意すべきは、輸入財と競争するセクターで(生産下落を通じて)児童労働に対する需要が増えたということを意味しているだけであって、貿易自由化が国全体で見て児童労働を増やしたとは言っていないということだ。インド全体では90年代を通じて通学率は大幅に上昇、児童労働は大幅に減少している。
(でも、反グローバリゼーションの論者には好んで引用されるようになるかもね…)
報告者本人が貿易自由化全体での効果を測っているのではないといっているにもかかわらずセミナー参加者の何人かは執拗に一般均衡モデルでないこと、貿易自由化全体の効果を出していないことにこだわっていた。
ちなみに彼女らは、ベトナムでも貿易自由化と児童労働の関係を分析していて、そこでは、米作農家にとっては生産者価格が統制国内価格から輸出価格に上昇し、生産が拡大した結果、児童労働が著しく削減されたことを示している。(注)
「ベトナムの実証の時はどこで何回報告しても誰にもモデルが一般均衡でないとか貿易自由化全体の効果はどうだなんて言われなかったのに…」と報告中文句を言っていたのが印象的だった。
国際経済学者(の多く)は、
貿易自由化のメリットの実証の際には、部分均衡モデルでもモデルがなくても、
貿易自由化全体の効果を測っていなくてもOKだが、
貿易自由化のデメリットの実証の際には一般均衡モデルを求めて、
かつ貿易自由化全体の効果を測っていないと突っ込みたがることがわかった。
(注)その仕事の一部についてはNYTの記事(2005年7月14日)が紹介している。
ECONOMIC SCENE; Research Changes Ideas About Children and Work
あと、バグワティの最近のグローバリゼーション本『グローバリゼーションを擁護する』の児童労働の章でも言及されている。が、次にバグワティがグローバリゼーション擁護本を再び書く時今日の論文は言及されるだろうか?