About

●このブログについて


このブログは今のところ私が読んだり,研究報告を聞いたりした論文のうち(私にとって)重要だと思った論文のメモです。開発経済学(特に産業発展論),国際経済学の最近の実証研究を主に取り上げています。

書いているのは産業発展,海外直接投資を研究している経済学博士課程の大学院生です。

ゆくゆくは,国際機関の動向,ニュースなどに関する意見や,(公開されている)データからわかる国際経済,途上国経済に関する重要な事実なども文章にして掲載していくかも知れません。

同じトピックの論文が何個か集まったらそれらを統一的な視点からまとめたエントリを追加して小サーベイ形式で提供することも考えています。

●注意書きというかお詫びというか


このブログの最大の目的は自分の備忘録として使うことですので,ところどころ読者に不親切なところがあるかもしれません。特に論文に対するコメントなどは実証分析の知識が必要な箇所が多いかもしれません。

この論文メモには私の能力不足により間違いが含まれているかもしれません。いかなる形でも使用にあたっては自己責任でお願いします。もし間違いを発見された場合はコメントしてくださると幸いです。

コメント,質問は歓迎します。ただ,できるだけ対応するつもりではいますが,時期によっては対応できなくなることもあると思われます。前もってお詫びします。もし,公開される形でのコメント,質問をされたくない場合メールでお願いします。

メール:info@tetteresearch.net

私の関心や能力を反映して,論文によって説明やコメントの充実度に大きな差があります。タイトルや語調なども統一されていません。
日付は文章を書いた日でなくて論文の報告を聞いた日,論文を読んだ日になっています。論文が報告された時点,論文を読んだ時点での感想ですので,その当時に未出版論文だった場合,論文が改善されて指摘されている問題点が直っていたり,主張することが変わっていることなどがあります。ですので,私のメモの中で論文の問題点や改善点を指摘している箇所については特に注意が必要だと思われます。

紹介されている論文は日本経済についての論文でないものがほとんどで,多くは途上国経済,もしくは国際経済学に関するものです。各エントリのタイトルでもっと明示的に書くべきなのかも知れません。

論文へのリンクは今のところ基本的に貼っておりません。タイトルをコピーしてGoogleで検索するとほとんどの場合論文全文のPDFファイルを見つけることができます。もしくは,著者名をGoogleで検索するとほとんどの場合 著者のHPが見つかります。未公刊論文はそこで全文のPDFファイルを見つけられることが多いです。

2006年03月18日

●新技術導入における他者からの学習

Conley and Udry (2005) mimeo

2006年01月05日

●企業の生産性の異質性と貿易

Marc Melitz. 2003. “The Impact of Trade on Intra-Industry Reallocations and Aggregate Industry Productivity.” Econometrica v. 71 no. 6, pp. 1695-1725.

今まで紹介してきた論文の中にこの論文の何らかの拡張であるものが多く含まれているので、簡単に説明することにした。

国際経済学の企業レベルの定型的事実として以下のものがあげられている。

事実1:財を輸出している企業は企業全体から見ればごく一部である。
事実2:輸出を行っている企業はそうでない企業よりも規模が大きく生産性が高い。
事実3;貿易自由化によって大規模で生産性が高い企業が輸出によって生産を拡大する。
事実4:貿易自由化によって小規模で生産性が低い企業は市場から撤退している。
事実5:貿易自由化によってセクターレベルの生産性は向上している。

Melitzの論文は独占的競争の一般均衡理論に企業の生産性の異質性を導入することで、これらの事実を説明する一般的で使いやすいモデルを提供している。

モデルの設定としては、
0.参入を考えている企業が多数ある。
1. 参入前はどの企業も自分の生産性を知らない。参入するためには一定の参入コストを払う必要がある。
2. 参入後に自分の生産性を知る。その後、各企業は独占的競争状態のもとで利潤を最大化する生産量を決定する。その結果として、生産性が高い企業ほど多く生産する。また、生産にかかる固定コストもカバーできないような生産性が一定水準以下の企業は退出する。
3. 2によって算出される参入の期待利潤がゼロになるように参入時の参入コストが決定される。
4. 実際に参入が行われて、各企業が自分の生産性を知り、生産を行う企業は利潤最大化水準で生産を行う。
  (参入した企業にとっては利潤は0でない)

ここまでは閉鎖経済の一般均衡モデルであったがここからは開放経済を考える。

4. 外国経済に参入するのには一定の固定コストがかかる。また輸送費が上乗せされる。
5. 固定コストや輸送費を払っても外国市場で利潤を上げられるような生産性の一番高い水準の企業が輸出を開始する(事実1、事実2) これらの企業は閉鎖経済よりも生産を拡大している。(事実3)
6 他方、生産性が高い企業が生産を伸ばしたことにより生産資源をひきつけることができなくなった生産性の低い企業は市場から撤退する。(事実4)
7 結果として資源再配分の結果セクターレベルの生産性は向上している。

このモデルはいろいろな方向で拡張されている。
直接的な拡張としては
FDIの説明(Helpman, Melitz, Yeaple (2004)AER)
生産する財の数の内生化による中国における外資と国内企業の新製品導入の差の違いの説明(Brambilla, mimeoの紹介を参照)
代替弾力性のセクター間の異質性と2国間貿易量にもたらす含意(Chaney, mimeoの紹介を参照)
南北間で製品の品質に差とその途上国内の賃金格差へのインプリケーション(Verhoogen, mimeoの紹介を参照)

実証をする人間にとっては企業レベルのインプリケーションが出せるところが大きいです。

2005年12月07日

●輸出財の品質を測定する方法

YaleのPeter Schottの報告を聞いた。

Estimating Cross-Country Differences in Product Quality
(With J.C Hallack)

各国の輸出品の品質を測定する新しい方法を提唱している。輸出品の品質の変化は経済発展と重要な関係を持っているし,最近では途上国の所得格差の拡大のメカニズムにも重要な役割を果たしていることが指摘されている(Verhoogen (mimeo)の紹介も参照)。また日米自動車摩擦の際には,VER(輸出自主規制)とともに日本の自動車メーカーが米国向けの輸出品をグレードアップさせたと言われているので,輸出品の品質を考慮することは垂直的差別化が可能な市場に関する通商政策の分析にも重要である。

ところが実証研究では品質の測定方法が十分に満足のいくものではないと指摘されている。今までの研究では品質変化が重要な位置を占める論文でも品質以外の変数に関する含意をテストしていて品質そのものには踏み込まなかったりしているか,財の輸出価格が高いほど品質が高いとみなしていることが多かった。しかし、品質以外にも為替レートや生産コストなど輸出価格に影響する要因はあるので輸出価格=品質とみなしてしまうことには問題がある。

この論文では各国各財の貿易量と価格,セクターごとの貿易黒字と各国の為替レートのデータからセクターレベルの品質を推定する方法を提唱している。そして実際に米国の主要な貿易相手国45国に関して1980年から97年の製造業の品質の推移を推定している。その結果,中国などでは旧来の輸出価格=品質とみなしてしまう方法では品質向上を過小に評価してしまうことがわかった。

(この論文の手法はややこしいので興味のない方は以下の文は飛ばしてください。興味のある方も以下の文を飛ばして原論文にあたることをおすすめします)

(1)任意の国のペアごとに品質と品質調整済み価格(Pure Price Index)を分離していない価格指数(Inpure Price Index) (セクター単位)を算出する。このInpure Price Indexは両国でセクター内の財の価格を集計したものの比で,理論上の概念で直接は観察不可能なものなので推定する必要がある。Inpure Price Index=Pure Price Index*品質という関係が成立している。

A国でA国での価格のもとである財バンドルを消費していたのが,価格水準がB国のものに変化したと考える。このときもともと消費していたものとまったく同じものを買うときにかかる支出額に比べ,当初得ていた効用水準を達成するために必要な支出額のほうが少なくてすむはずである。このことから最低必要支出額の比とA国とB国の(パーシェ(のようなもの)価格指数とラスパイレス(のようなもの)価格指数の2つ分不等号が成立する)。セクター内の財の数が2国間で異なってもいいようになっているので話がややこしくなるが一定の条件の下でInpure Price Indexがこの2つの価格指数の範囲内に収まることが証明できる。パーシェ,ラスパイレス価格指数はデータから計算できる。そして,Inpure Price Indexを実際にハーシェ,ラスパイラス価格指数内に収まっている割合を最大化するように推定する。

(2)国,セクター別貿易黒字率を(1)(1)で推定したInpure Price Indexと固定効果,トレンド項に回帰して,そこで得られた各係数の推定値からPure Price Indexと品質を計算する。

ある国,あるセクターの貿易黒字率は標準的な消費者効用最大化の帰結として品質調整済みの価格指数(Pure Price Index)と貿易コストの関数としてあらわしうる。( 産業組織論の実証ではシェアと品質をリンクさせることがあるが,考え方としては似ている。)  また。ある国,セクターの品質を固定効果と国,セクター固有の線形トレンドと撹乱項の3つからなっていると仮定する。そうすると,貿易黒字率を(1)で推定したInpure Price Indexと固定効果,トレンド項に回帰することで得られた各係数の推定値からPure Price Indexと品質を計算することができるようになる。Inpure Price Indexは品質への撹乱項と相関を持っていると考えられるので,為替レートを操作変数として使うことを提案している。

疑問点(おもに手順(2)に関して)
この論文では固定効果の推定量は一致性を持たないはずなのに,それを品質の計算に使うことはどこまで正当化されるのだろうか。

また,固定効果とトレンド効果の推定量(の和をInpure Price Indexの係数の推定値で割った)がそのまま品質の推定値となると,セクター別貿易黒字率の品質以外のセクター固有要因と品質向上以外のセクターの線形トレンド要因もすべて品質と計算されてしまうような気がする。マクロで貯蓄超過の国の品質を過大評価することにならないだろうか。

さらに,Verhoogen(2004)紹介はこちらではメキシコでは通貨価値下落によって貿易機会が広がり品質向上がもたらされたことを主張している。もし為替レート変動そのものが品質向上へのショックとなるならSchottの推定方法のうち為替レートをInpure Price Indexの操作変数として用いる部分は正当化されなくなると思う。

2005年12月05日

●汚職は効率的か?

シカゴ大学のMarianne Bertrandの報告を聞いた。

"Obtaining a Driving License in India: An Experimental Approach to Studying Corruption"

インドの自動車免許取得プロセスでの汚職に関する実験的実証研究で、
汚職は非効率なルールに対する抜け道として資源配分の効率性向上に役立っているか
という仮説を実証していた。

以前紹介したBen Olkenの研究などでは汚職の有無や,汚職を減らす方法
に焦点がおかれていて,汚職がそもそも悪いものかどうかは問われていなかった。

自動車免許を取ろうとしている人の中からランダムに声をかけた800人くらいを
特に何もしない(調査協力への謝礼のみ)グループ(A)
早く免許を取れたらボーナスをあげるグループ(B)
運転教習をただで提供するグループ(C)
3つに分けて、実際に免許を取るまでの期間、免許を取るまでの事務的プロセス(役人とどのようなやり取りがあったとか)、免許を取った直後の自動車運転に関する知識と技術を比べていた。
平均的な結果は、
Aグループ:最初は自分で役人と交渉するも歯が立たず途中から代理人を雇う。運転の腕前は下手。
Bグループ:最初から代理人を雇ってとっとと免許をゲット。運転の腕前は下手。
Cグループ:なまじ運転ができるようになるせいか、最後まで役人と自分で交渉して免許取得までに一番時間がかかる。運転の腕前はA,Bよりもはるかに上手。

役人に直接賄賂を渡したケースはほとんどなく(調査協力者が賄賂について語りたくないからということはないということはチェックしているらしい)、代理人が実質的賄賂の仲介者になっているらしい。結果としては、免許取得にお金をたくさん払う気がある人は早く取得できるという意味では汚職は資源配分の効率性に寄与している、そしてそれは、運転がうまくて早く免許を取るに値する人が早く免許を取るようにはなっていないことから、大事なのはあくまでお金を多く払う気があるかどうだ、ということになる。

とりあえず、AとBに関しては、免許を取っているのに60%前後の人が自動車運転に関する基本的な質問(ブレーキとアクセルの区別など)5問のうち最低1 問を間違えているとか、免許を取る前のアンケートで25%の人がすでに車の運転をしたことがあると答えているとか、代理人を雇うとほぼ確実に実地試験がなくなるとか(汚職は非効率なルール(官僚との複雑なやり取り)だけでなく必要なルールまでも曲げているということ)、いろいろショッキングなデータがあった。

代理人の存在が免許取得の手続きで決定的な役割を果たすのにも関わらず,
報告では代理人のことは実証結果の説明のところまで触れられなかったので
わかりにくかったのが残念。

2005年11月22日

●補完性、垂直統合、比較優位

ハーバード大のPol Antrasの報告。

Contracts and the Division of Labor
(with Daron Acemoglu and Elhanan Helpman)

Grossman-Hart-Moore流の所有権理論のモデルに、
(1)サプライヤーを複数にし、サプライヤーの投資間に補完性を導入し、
(2)契約の不完備性のパラメータを導入したうえで、
契約の不完備度が高くなると、分業の度合い(独立したサプライヤーの数)と生産性が減ること、特に補完性が大きい産業で顕著にその効果が現れること、結果として、契約の不完備度が国々の間の比較優位の要因になりうることを示していた。

サプライヤー間の行動、技術に補完性があるとメーカーの垂直統合の意思決定がどのような影響を与えるか
ということを明示的に分析したのはこの論文が初めてだと思われる。しかしこのモデルで説明できる現象などがあるのかどうかは不明。

2005年11月16日

●企業の生産性の異質性が貿易量に与える影響の実証

Tom Chaney(シカゴ大)の

Distorted gravity: Heterogeneous Firms, Market Structure and the Geography of International Trade
の報告を聞いた。

貿易を行うときの障壁が低下したときに貿易量がどれだけ増えるかは、各財の需要の代替弾力性に正に依することがKrugmanのモデルによって示されていた。代替弾力性が大きいと貿易コストの低下で輸出入品の価格が下がったときにそれだけ国内品から需要を奪うからである。しかし、その分析は産業内の企業の生産性が同質であることを前提にしていた。この論文は生産性にばらつきがあるケースでは、財の需要の代替弾力性の影響は正反対になることを示している。生産性にばらつきがあるケースでは,一部の高い生産性を持つ企業しか輸出しない。この場合貿易コストが低下したときにはすでに輸出していた企業が輸出量を伸ばす効果だけでなく,新たに外国市場に参入する企業が出てくる効果も出てくる。後者の効果は代替弾力性が小さいほど大きい。新たに参入する企業は輸出企業の中では比較的生産性が低いので代替の弾力性が小さくて市場競争が激しくないときほどより多く輸出することができるからだ。この後者の効果が大きいと,需要の代替弾力性が小さいときこそ,貿易を行うときの障壁が低下したときの貿易量拡大効果は大きいことになる。

さらに、それをGravity Equationという国際経済学で2国間の貿易量の要因を分析する際に頻繁に用いられる手法を用いて実証している。具体的にはサンプル中の任意の2国間の財ごとの貿易量をGDPや財の代替性や貿易コストの指標,およびそれらの交差項に回帰して,貿易コスト指標と財の代替性指標が正になるかどうかを実証している。

最近の国際経済学は企業の生産性のばらつきを独占的競争一般均衡分析に取り入れることで貿易に関する定型的事実をこれまでよりうまく説明できるようになったり、豊富な実証的含意を生み出したりしている。(Melitz(2003)Econometricaの項目を参照)この論文の貢献は企業の生産性のばらつきがどのように貿易パターンに影響するかについて新たな視点と証拠(そんなに強くはないけど)を追加したこと、よく使われる実証手法で実証できる含意を得たことだと思う。

報告者は2005に年PhDを取って就職したばかりの人だ。
論文そのものの評価とは異なるけど、大学院生の立場から見ると、偉大な古典的モデル(この場合はKrugman(1980))と最近の流行の理論モデルの双方から正反対のインプリケーションを導き出してどちらが正しいか実証するというのは、実証結果が(意味をなすものである限り)どちらに転んでもみんなが興味を持ってくれる論文になるという意味で非常に賢い戦略だと思う。理論もできるとこういう戦略が取れるということで理論をがんばる意欲が増した。

2005年11月02日

●中国における外資企業と新製品導入

Irene Brambilla (Yale)の報告を聞いた。

博士号を最近取ったばかりの人だが,途上国の産業組織の研究で
面白い論文をいくつか書いている。この日は,
Introduction of New Varieties of Goods in the Chinese Manufacturing Sector
の報告を聞いた。

中国における外国企業は地元企業より新製品の導入が盛んであるということと,
その源泉が技術力の優位にあることを実証していた。

Melitz(2003, Econometrica)のモデルを拡張して、各企業の製品の数を内生化したうえで、新製品開発に関わる固定費用と開発した費用を生産するための変動費用という2種類の費用が低い(生産性が高い)企業ほど多くの製品を導入するという含意を導き出している。

そして中国に進出している外資企業は中国国内企業よりも生産性が両種とも高いと思われるので、より多くの新製品を導入しているであろうという仮説を世界銀行の企業パネルデータを用いて検証している。そして,開発のための固定費用と生産のための変動費用のどちらがより重要かを検証しようとしている。

実証結果としては
調査期間(1998-2001年)中に外資企業は中国国内企業よりも導入した数が多い,
生産関数の推定ではTFPは外資系のほうが有意に高い,
開発の固定費用も100%外資系に限れば外資系のほうが有意に低い,
外資系は自社で新製品開発を行う頻度は低く,外国(本社)から製品を移転している頻度が高い。
TFPのほうが固定費用よりも新製品導入数を説明している。
という結果になっている。

外資系企業は本社などですでに開発済みの商品を持ってこれて,生産のノウハウもあるから(中国市場にとっての)新製品導入を国内企業に比べて容易に行えるということだと思われる。

外資企業のほうが新製品導入が活発であるということを主流のモデルの拡張できちんと説明し,かつ,モデル上
重要な説明要因(開発費用と生産費用)についても実証しているいう意味で,理論と実証が密接に結びついた
研究になっている。

非説明変数によって資本ストックがコントロールされていたり、いなかったりするのですべての被説明変数ですべての定式化について言及したほうが望ましいこと、市、産業ダミーはコントロールされているが、その交差項もコントロールしたほうが望ましいことなど、実証面での細かい改善点はある。

外資(直接投資)が企業の生産性を向上させるかどうかについては多くの実証研究がされているが、成長率の高い企業に資本参加しているのか、外資の資本参加が生産性向上をもたらしているのかを厳密に識別できている実証研究は(私の知る限り)ない。(ただ、識別できていると主張して書かれたが実際にはできていないことをおそらく誰かに指摘されてそこの部分の主張を引っ込めた論文はあった。)この論文での外資企業はすべて外資系が自ら設立したか、最初から設立に参加しているものなのでこの問題の影響は小さくなっている。と同時に、この結果を直接投資一般に適用することができるかどうかについては若干の留保が必要となっている。

また,中国やインドが技術進歩面で他の途上国と異なる点は,多国籍企業によって外国から技術が移転されているだけではなくさらに新技術の開発も行われていることであると指摘されてきている。他の国での研究と比較するためには新製品導入の中身をもっと知る必要があると思われる。

あと,新製品導入が国内向けか輸出向けが分かれば途上国の技術発展についてもっと含意が得られていたかもしれない。論文の結果では輸出の規模は生産性をコントロールすると新製品導入と相関をしていないが,生産性と輸出が高く相関しているからかもしれないので,このことから直ちに新製品導入は主に国内消費者向けに行われているとは言えないかもしれない。