経済学専攻で米国の大学院に留学することを考えている人を対象とした経験談でした。現在は経験談というよりはアドバイス集という体裁を取ったたわごと集になっていますが…
どちらかというと、応用分野を専攻している人向けです。あと、毎年何人もコンスタントに留学するような大学の人にとっては純粋に不必要な内容だと思います。
包括的なガイドに関しては、下松さん(東大→LSE)の
経済学大学
院留学ガイドページを参照のこと。
あと、安田さん(東大→Princeton)の
ブログ内での一連のエントリ、議論も参考になると思います。あと、
Susan AtheyのHPも必見です。
初版2003年8月。2005年3月と2009年3月に加筆修正。
執筆者である私個人の出願に関する記録を書いておくと、
戦績:1勝6敗:○コロンビア大学、×(主にランキングでトップ10に入るところ)
GPA:学部3.64、院3.92 (両方とも京都大学経済学部・院)
TOEFL:277(Listening25,Structure28,Reading30,writing5.0)
GRE:Verbal540,Quantitative800,Analytical730
推薦者:山本裕美先生、西村周三先生、森棟公夫先生(いずれも出願時京大経済学部)
お断り:
先に断っておくと、ただ必要書類だけ揃えて上位校とみなされる有名大学院に出願すると
ぽこぽこ落ちます。私は論文すら提出しなかったので、私がこれくらい
の受験校数で1校でも受かったのは運がかなりよいと言えます。
−運がかなりよいどころか、正直何で受かった
のかわかりません。米国の大学が重視する能力を示す客観的な証拠を一切出してないので(したがって先生たちも強く推薦する根拠がない)。ごめんなさい。
(2009年3月)
某後輩にも、「留学にあたって読んだ体験談の中で唯一「こいつ全然わかってないだろ」と思った。」という証言を得ております。
出願数も少ないし、出願過程における情報収集などの努力も著しく少ないので、ごく限られた経験とその後の風聞と憶測をもとに書かれていることを留意の上、鵜呑みにしないで下さると幸いです。
ソースは明記してない限り風聞と憶測です。あと、○○したらいいんじゃないか、と書いてあることは1つ残らず自分ではやっていません。
さて、米国経済大学院出願に関して直接必要になるものは、
(1)願書(出願者の基本情報・Statement of Purposeと呼ばれる志望動機エッセイ)
(2)教官3人からの推薦状
(3)TOEFLとGREの点数
(4)成績表
(5)サンプル論文(任意)
(6)受験料(60$から100$:大学によって異なる)
です。
それぞれの選考における重要度は以下の通りと予想されます。
(1)願書・Statement of Purpose
-Statement of Purposeは経済学の場合重要でないとよく言われます。所詮自己申告ですから。
ただし学生の分野のバランスを取るために、どの分野を希望しているかは専攻に考慮されることがあるので、なぜ出願先に行きたいかを積極的に書くと、書かないよりかははるかにましだと思いますが。(私は書かなかったけど。汗)
結果論として、ColumbiaはStatement of Purposeで私がやりたいトピックと
ドンピシャの教授がいるところだったし。(それすら事前に調べてない…)
その人はいなくなってしまったけど…
-この大学だったらこの先生につきたいというのを決めて、その先生にアピールする内容を含めるのがいいのではないでしょうか。
-あと、願書の中にその大学院の教授とのつながりを書く部分があり大学が多く、
(例えばコロンビア大では「この出願についてコロンビア大の先生と相談して
いるか?
相談しているとしたらその先生に名前
を書いてください。」と
いった項目があります。)
合格に足る実力があるとその大学院の教授に認識されている場合は非常に有利なのではないでしょうか。
-英語力についてはないよりかはあった方がいいでしょう。私の場合、Statement
of
Purposeの英語はある英語の達人の先生に見ていただいて
英文は非常に良くなったと思います。
しかし、出願の締切の関係上、コロンビア大とバークレーには添削前の
もの、そのほかには添削後のものを送っています。で、受かったのはコロンビア大だけ。
先生せっかく時間を割いて頂いたのにすみません…まあ、だからといって、英文を改善することを怠って良いわけではありませんが。
(2)教官3人からの推薦状
推薦状が選考に関して一番重要だと思われます。
選考に強力な順として、
超強力:出願先の大学の教授に知られている教授(中身がよければ)
あとは出願先の教授なんか最強かも。
中身は信頼される:アメリカ人、あるいはアメリカの大学の教授
中身すらあまり信頼されない可能性がある:それ以外の教授
つまり、書類選考だけで入学を決めるので、素性が全くわからない学生よりは、よく知っている高名な学者、ある
いは知り合いの学者の推す人間の方を取りたがるわけです。それ以外では、「誰をも誉めちぎるということはない」という信頼をアメリカ人、アメリカの大学の
教授が相対的に得ているのに対し、その他の教授にはそういう信頼がないので、あまり中身を評価してくれない可能性があります。各志願者を点数化をする際
に、アメリカ人推薦者とそれ以外ではっきり点数規準が違う大学すらあるそうです(選考委員経験者情報)。日本人の先生の場合はどれだけその先生が知られているか、
どれだけその先生の書いている内容が客観的に良さそうか、ということが重要そうです。
-というわけで、まずは、時間があれば、海外で有名な先生から推薦状をもらえるような努力を…
-あとは誉めるべきところを具体的に根拠をあげて褒めてもらえるように推薦者に働きかけることは重要かと思います。(「彼(女)は優秀な学生で努力家だ。」なんてのは具体的な根拠がなければ逆にネガティブな印象すら与えかねません。)
-多くの大学の推薦状のフォームに「この学生は同学年の中で上位何%に入るか」という項目がありますが、アメリカの教授にとって、アメリカの各大学の上位x%のレベルは大体想像できるかも知れませんが、例えば京大で上位x%という記述からどれだ
けの情報を得られかは不明です。その集団のレベルを出願先の教授がわかるように書いてもらえればなおいいかもしれません。(例えば、東京大学のH先生は東大の修士を出てアメリカのPhD課程に留学した人で1年目にドロップした例はここ数年ないとか書かれるそうです。)
-もし、自分の大学の先輩で出願先の大学に留学している人がいて、推薦者がその人を知っている場合はその人と負けず劣らない人材であることを書いてもらうといいかもしれません(本当ならば)。
参考:
Jean Tirole"A Theory of
Collective Reputations (with Applications to the Persistence of
Corruption and to Firm Quality)",
The Review of Economic Studies, vol. 63, n. 1, January 1996, p. 1-22.
「米国の大学院の入学選考におい
て,他国のあまりなじみのない大学からの志願者を審査する場合,その大学から過去に入学させた学
生がいればその学生のパフォーマンスも考慮に入れられるだろう。」
-一般論として(a)留学して海外の大学に勤務経験のある先生、(b)業績をあげている先生、(c)海外Ph.Dを新卒でよく雇用している大学の先生の方が、学生のスペックを所与として、どのような推薦状を書けば効果的かご存知なのではないでしょうか。
(3)TOEFLとGREの点数:悪いとそれだけで落ちる可能性があるが、良いからと言ってそれだけで受かる
確率はほとんど上がらないと思います
(4)成績表:数学の点数は重視、ミクロマクロ計量の点数はまあ考慮、他は関係ないという感じらしいです。あ
る大学では出願者の成績表から数学関連科目の成績だけを抜き出す作業
に大学院生が動員されたらしいです。
(5)サンプル論文(任意):出すべきでしょう。出しません(出せません)でしたが…
というわけで、自分もしくは教官に出願先の大学院との強力なコネクションがなく、成績も今から変える余地があ
まりない場合、他にアピールする部分がないので上位校と呼ばれる大学院に合格するのは非常に難しくある意味運任せになると言ってよいと思います。
あと、前述のように先輩の
パフォーマンスも影響する可能性など、ますます自分ではどうしようもない要因があるので、不合格でもあまり落ち込まないように。
>京大生の人へ
コロンビア大に入り損ねたから
といって私のせいにしないように。
そこで、対策としては、以下のようなものが考えられます。
(1)出願までにコネクションを作って自分のスペックを上げる。
コネクションの作り先は、2つあって、
・推薦状を書いていただく教授
・出願先の教授
俗に前者を、教授の推薦状で出願先に押しこんでもらうPush戦略といい、
後者を出願先の教授に引き入れてもらうPull戦略といいます。
具体的には、前者だったら、ゼミに出たり質問をよくしたり、後者だったら狙いを決めた人の論文を読んで質問・
コメントなどをして、その延長線上で自分を売りこむわけです。大学によってはコースワークでいい点数を取ることも重要だと思います。ただし、コースワークで授業を教えただけでは
推薦状を書かない先生もいます。そもそも推薦状を書いてもらうためにはどうすればいいのかを事前に聞いておくべきでしょう。Push戦略の方が自分のことをよく知ってもらうための時間がかかるかもしれません。
Pull戦略の方は本気でやったら出願先の数だけ必要かもしれませんが、留学後のことを考えた場合や、現在の勉強のインセンティブにはいいかもしれません。
しかしまあ、Pull戦略ができるような人はPush戦略も普通はできるはずですが…
というわけで、あまり現実的でないとは思いますが、ありえる方法を書いておくと
(a)日本に客員で滞在している海外の先生と会って自分を売り込む。
(b)学会で報告して海外の先生と話す。
(c)関連分野の先生にその先生の論文についての質問、コメントをしたり、自分の論文を送る。
(a)で成功した例は聞いたことがありますが、(b)(c)が決め手になった例は知りませんねえ。
ちなみに、出願後のコンタクト
は嫌がる先生もいるので注意。出願前のコンタクトもうざがる先生はいます。
(2)上位にランクインしていないが、自分の専攻分野ではものすごく強い大学院に出願する。
例えば、経済学部全体のランキングに比べてある分野のランキングが特に強いというものには、国際貿易ではコロンビア大学、ペンシルバニア州立大学、カリフォルニア大学デービス校、コロラド大学ボルダー校などがあります。ここらへんの情報はそれぞれの分野の先生に
尋ねるのがいいのではないかと思います。
(3)専攻が開発、医療、環境などの応用分野の場合、経済系の大学院でなく国際関係、国際開発、公衆衛生、環
境などの大学院に行く。または、ビジネススクールの博士課程に行く。
これらは、(1)があくまで、上位校の経済専攻の博士課程への入学をめざすものであるのに対し、自分の目的と
照らしわせて、上位校の経済専攻とほぼ同様の効果をより低い競争倍率で達成しようというものです。
国際関係、国際開発、公衆衛生、環境、ビジネススクールにも経済専攻の教授は(ほぼ)どこでも複数います。で
すから、そういう応用分野で経済学の論文として博士論文を書くことも可能(なはず)です。
ただ、(3)だと、経済のコアコース(ミクロ・マクロ・計量)を履修できるか定かでありませんので、履修希望
する場合は事前に出願先に相談した方がいいでしょう。
(4)とりあえず、米英カナダの経済学修士課程(MA)に留学して、そこからPh.Dに出願し直す。Ph.D予備校のようになっているMA課程の存在はいくつか聞きます。
ただし、そういうMA課程で奨学金が出る可能性はほとんどないと思います。あと、公共政策大学院の修士課程からPh.Dに進んだケースも聞きます。
(2)(3)の場合、具体的にどこに出願するべきかの情報収集については、実際に米国にいるのといないのとで
は格段に差があると思われますので、自分とほぼ同じ分野で最近Ph.Dを取った人、あるいは、現在米国の大学院にいる大学院生に聞くのが早道だと思われま
す。特に就職状況などの情報も聞いておいたいいと思います。
大学院のHPに院生ページのようなものがあって、そこに、名前、メールアドレス、Webページ、顔写真などのリストがあることが多いです。なければ、その学科にメー
ルを出して「日本人学生のアドレス教えて」と聞い
てみましょう。紹介してくれる保証はないですけど。
最後に...
応募プロセス全体で時間・労力・お金がかかります。
(1)時間・労力
出願時期そのものは12月〜1月に集中していますが、
その前に、英語の試験を受けたり、日本国内の団体の奨学金を申し込んだり、推薦状をお願いしたり、出願書類を書いたりと結構やることは多いです。しかも、
これらは、奨学金を除いて出願に必要な物理的最低限の作業です。合格確率を高めるために行うPull戦略にかかる時間・労力はその数倍は
かかると思います。
(2)お金
出願料が1校当たり、60$から100$くらいかかります。TOEFL・GRE受験料が各100$-150$くらいかかります。(正確な数字は忘れた)
くれぐれも時間制約・予算制約によって受験校数を減らすはめにならないようにしましょう。